のいい大葉柏が斑《まば》らに散在していた。そして原始林地帯がところどころに、荒れ野原へ岬《みさき》のように突入しているのだった。
彼等の原始的な生活が、そこに始められた。深林を背負って、彼等は南に向けて小屋の入り口を並べた。陽があがれば野原に出て男達は木の根を掘っくりかえし、女達は土塊《つちくれ》を打《ぶ》っ砕《くだ》き、陽《ひ》が沈めば小屋に帰って眠《ね》るのだった。そして、四五年の後から年賦で返済する条件で、少しばかりの米と味噌と塩とが地主から貸し付けられるだけで、その他の物はすべて自給自足だった。彼等は最初に蕎麦《そば》を蒔《ま》き黍《きび》などを作った。次に玉蜀黍《とうもろこし》、馬鈴薯、南瓜《かぼちゃ》を作り、小豆《あずき》、白黒二種の大豆、大麦、小麦と土地の成長に伴《つ》れて作物の種類を増して行った。併し、そうなるまでが大変だった。
「こうして腕の抜けるほど稼《かせ》いで、こんな馬の食うようなものを食って、着るものも着ずに乞食《こじき》のような身装《みなり》をして暮らすんなら、郷里《くに》の方にいたって、暮らせねえことも無かったべが……」
若い女達は、そう言い合って泣い
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