熊の出る開墾地
佐左木俊郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)無蓋《むがい》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)足|許《もと》に立てた

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)斎※[#「土へん+敦」、第3水準1−15−63]樹《ちさのき》
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 無蓋《むがい》の二輪馬車は、初老の紳士と若い女とを乗せて、高原地帯の開墾場《かいこんじょう》から奥暗い原始林の中へ消えて行った。開墾地一帯の地主、狼のような痩躯《そうく》の藤沢が、開墾場一番の器量よしである千代枝を伴《つ》れて、札幌の方へ帰って行くのだった。
 落葉松林が尽きると、路はもはや落ち葉に埋められて地肌を見せなかった。両側には山毛欅《やまぶな》、いたやかえで、斎※[#「土へん+敦」、第3水準1−15−63]樹《ちさのき》、おおなら、大葉柏などの落葉喬木類が密生していた。馬車はぼこぼこと落ち葉の上を駛《はし》った。その上から黄色の葉が、ぱらぱらと午後の陽に輝きながら散りかかった。渋色の樹
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