のような病気のものには、ほんとによく利きますのね。」
彼女は、そんなことをいったりした。
「で、病気の方、もういいのかね?」
「そりゃ、とても、もういいってほどにはならないけど、なんだか、だんだんよくなるような気がするわ。でも、駄目ね。よくなる片端《かたっぱし》から打《ぶ》ち毀《こわ》しているんですもの。だから、わたし、自分をよく金魚のようだと思うことがあるわ。そら、滝の湯の横に、岩に掘った小さな池があって、家鴨《あひる》を飼っている家があるでしょう。あの池の中に、沢山金魚がいるのよ。ところが、その金魚ったら、どの金魚も、あのひらひらと長い尾がみんな無いの。家鴨に食べられるんですって。そしてまたその尾がひらひらと伸びて来ると、すぐまた食べられるんですって。だから金魚ったら、尾の伸びる間が無いんだっていっていたわ。まるで私のようじゃなくって? 仕様のない家鴨ね。」
彼女はそう話して、ひどく淋しそうに微笑んだ。
「家鴨が悪いんじゃないでしょう。一緒に飼って置く方が悪いんだ。池の中の社会組織が悪いんだ。そう思うな。」
吉田はそういってから溜《た》め息《いき》をついた。
「でも、金魚なら
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