だったら、すぐ(いつかまた呼んで下さいね。そして今度は直接にして下さい。私のところはここですから……)って、頼んで置いたら、先方でだって、かえってその方を欣《よろこ》ぶかも知れないしね。」
「それはいいわね。小母さん! あの人もそんなことを言ってたわよ。これからは直接にしようかって……」
「あの人は、とても物事のわかっている人なんだもの。あの人は泥棒はしても、ちゃんと理屈に合った泥棒をしているんだよ。――つまり、あの人に言わせると、金持ちなんて者は、貧乏人が、あくせくして働いたお金を掻《か》き蒐《あつ》めて金持ちになっているのだから、言って見れば泥棒のようなもんで、その泥棒の上前《うわまえ》を刎《は》ねて来て、最も困ってる貧乏な人達にわけてやるのだったら、たとえ泥棒とは言え、何も悪いことは無いじゃないかっていうのさ。――立派なもんじゃないの? 宅《うち》なんかでも、困って少しお金を借りて、そのままもらってしまったことがあるけど……」
「悪くないわね。それなら。――じゃ、小母さん、わたし帰るわ。」
「また籠抜けかい? 店屋《みせや》なんかでだと嫌うらしいけど、宅なんかじゃ構わないから、な
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