る一つの段階を越えるための手段としては、正しい手段ということができるだろうね」
「しかし、暴力なんてものでうまく治まるものでしょうか? あなたなら、あなたがもし職工側にいたのでしたら、この場合どうします? やはり、暴力でいきますかね?」
「ぼくかね? ぼくなら、徹底テロリズムを持ち出して、親父の奴《やつ》をまず真っ先にやっつけるだろうね」
賢三郎はそう言って微笑《ほほえ》んだ。真面目《まじめ》とも不真面目ともつかない微笑であった。しかし、布川はどこまでも真面目であった。
「……でも、あなたはそれで、自分は犠牲者になってもいいのですか? 犠牲者になってもやろうとお思いになりますか?」
「なぜ、きみはそんなことを訊《き》くんだね。鉄工場の職工たちがテロリズムを持ち出せば、きみまでやっつけられると思っているのかね? きみは案外|臆病者《おくびょうもの》だね。安心したまえ、いくらなんでもきみまでやられるようなことはあるまいから」
「ぼくはそんなことを恐れているんじゃないんです。ぼくは知りたいのです。正しいことを知りたいんです。あなたがテロリズムを肯定していて、ある手段として肯定していて、さて
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