それでぼくのほうが誤っているのかね? きみはまさか、自分の罪をぼくになすりつけるつもりじゃあるまいね?」
「わたしはそんな人間じゃありません。しかしあのことなら、それはあなたが殺したのですよ」
「ぼくが?」
「そうです。それはわたしはあの手拭いを引っ張ったですけれども、わたしは手拭いを引っ張った手に過ぎなかったのです。引っ張るべきだという意志は、あなたがわたしに強いた意志じゃないですか?」
「きみ! そんなことを大きい声で言っちゃ困る。ぼくはそんなつもりじゃなかったんだ」
「しかし、それは事実です。あなたはテロリズムの話を持ち出したとき、わたしになんと言って教えたか、それを思い出してください。わたしはそれを実行したまでじゃありませんか?」
「きみ? しかし……しかし……」
 賢三郎の声はひどく顫えた。
「大丈夫です。あなたがその話を持ち出してわたしを罪人のように言うから、わたしはそう言っただけです。だれにも公言なんかしやしません」
「……でも、きみはぼくの過失だと言うからだよ。ぼくの過失から……」
「わたしの過失と言うのは、だれが殺したか? その責任を言っているのじゃないです。あなた
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