は、資本家として、職工たちの生活を改造してやろうと思っているのでしょう? それを言うのです。それが過失じゃないでしょうか? たとえば、資本主義は職工を搾取する機械でしょう。あなたはその搾取する機械を運転している資本家じゃないですか。わたしの言った過失というのはそれなんです」
「まあ、それはそれでいい。それならぼくの過失でいい。それできみは、職工たちにどんな仮装をさせるのかね? 仮装をさせるのにそんなに金がいるかね?」
「わたしは仮装観桜会はしません」
「では、どうして……」
「あなたが去年の仮装観桜会のころのことを思い出して、職工たちの今度の要求を全部|容《い》れてやっていただきたいのです」
「全部?」
「全部です」
 布川はそう言って、じっと賢三郎の顔を見詰めた。賢三郎も、布川の顔を見詰めた。二人の間に沈黙が続いた。



底本:「恐怖城 他5編」春陽文庫、春陽堂書店
   1995(平成7)年8月10日初版発行
入力:大野晋
校正:鈴木伸吾
1999年6月28日公開
2005年12月23日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://
前へ 次へ
全28ページ中27ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
佐左木 俊郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング