たとえその後うまくいかなかったにしても、大局から見たら結局はプロレタリアが勝っているのじゃないかね」
「しかし、局部を見究めることも必要だと思うんです。……あなたの場合だったら、それをどう解決しますかね。養父がやられ、そのうえに職工たちの要求に……」
「きみ! ぼくをそんな人間と思うのかね? ぼくをそんな無理解な人間だと思うのかね? 職工たちが正義のためにとった手段に対して、ぼくがとやかく思う人間だと……」
「分かったです。それで分かりました」
布川は低声《こごえ》ながら、叫ぶようにして言った。
「……つまり、テロリズムを持ち出す場合は、その場の様子を見なければいけないわけですね。そして相手の様子によって……」
「それはそうだよ。闘いじゃないか? いまどきはそんなテロリズムを担いでいる闘士なんてないだろうからね? しかし、その場合によって、どうしてもテロリズムでいかなければならないことがあったら、それは仕方がないじゃないかね? たとえテロリストでない人間でも、その場の成行きで急にテロリストになることだってあるだろうし、ぼくならその工場の後継者としてそのテロリストの行為に好意を持つね。ぼ
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