「おい! おい! 眠っているのか? 大変なことになったぞ」
 和尚が回ってきて、そう言って二人を叩き起こしたのは陽が出てからであった。二人は呆気《あっけ》に取られて、怪訝《けげん》そうに和尚の顔を見た。
「どうもお遺骨らしいものが、二人分あるように見えるんだが」
 和尚は首を傾《かし》げながら言った。二人は驚いて立ち上がった。
「二人分?」
「どうも、二人分らしい」
 和尚はもう一度首を傾げて、焼き場のほうへ向き直った。
 焼き場は一坪ほどばかりが白い灰になっていた。そして、そこからはまだ細い煙が上がっていた。その中に爺の白い遺骨が少し腰を屈《かが》めた恰好《かっこう》で、雨ざれた枯木のように横たわっていた。――もう一人分の遺骨というのは、これは実に小さいものであった。吾平爺の遺骨の片腕ほどもないものだった。兎《うさぎ》の骨と思ってみれば、ちょうどそんな大きさであった。猫の骨と思われないこともなかった。しかし、その骨格がただ小さいというだけで人間の遺骨として疑わせないものがあった。それは吾平爺の遺骨の模型といってもいいほどであった。――それに、もしそれが人間の遺骨ではなく猫とか犬とかい
前へ 次へ
全26ページ中15ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
佐左木 俊郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング