或《あ》る嬰児殺《えいじごろ》しの動機
佐左木俊郎

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)或《あ》る嬰児殺《えいじごろ》しの動機

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)毎朝|神田《かんだ》の青物市場へ

−−

     1

 都会は四つの段階をもって発達し膨張するのを常とする。海港の街は、まずその触手を海岸へ、海岸の空地へと伸ばしていく。田舎の小さな町でさえ、そこに一本の河川が流れていると、河岸へ河岸へと水に向けて広がっていく。そして、水際に猫の額ほどの空地もなくなると、第二段階としてその郊外に向けて農耕地域の上に触角を伸ばしていくのだ。その機構の許す限り、どこまでもどこまでも広がっていく。しかし、ここまではほんの広がるだけに過ぎない。広がり切れなくなったところで、初めて膨張が始まる。まず空へ! 建築という建築が空を目がける。上層建築が建ち並ぶ。太陽のない街が続く。街上に太陽が照らなくなると、第四段階の発達として、容易に地下の街が構成されるのだ。地下工場! 地下住宅! そして第五段階は? それはもはや都会の膨張発達を示す段階ではなく
次へ
全26ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
佐左木 俊郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング