ったような動物の骨であるとすれば、焼跡にはきっと尻尾《しっぽ》の骨が魚の骨のような形で残っているはずだった。
「人間の骨に見えないか?」
 和尚はもう一度繰り返した。
「どうも和尚さん、これは人間の骨のようですね」
「おめえさんたちは、焼く前によく見なかったのかね」
「なーに、伝染病だっていうもんですから、あそこの娘が出して寄越した襤褸もなにも見ずに、はあ死骸《しがい》と一緒に焼いてしまったんでさあ」
 年寄りの人夫がそう答えた。
「それがいかんのだね。それが過ちの因《もと》というものだ。これはとんだことになっちまったもんだ」
「和尚さん! この小さいのだけ、どこかへ捨ててしまったらいけないでしょうかね?」
 若いほうの人夫が当惑そうな目で、和尚の顔を見ながら言った。
「とんでもない! 人間のお遺骨をそんなことしたら、それこそ罰が当たるというもんだよ」
「じゃあ、どうしたらいいんですかね?」
「とにかく、駐在所が立ち会うことになっているんだから、すぐ駐在所へ知らせなくちゃあ」
「おい! おめえ行ってくんろ。ようく旦那に事情を申し上げてな」
「とにかく、来てみてくれって、呼んでくらあ」

前へ 次へ
全26ページ中16ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
佐左木 俊郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング