無[#レ]勇非[#レ]孝也。曾子孝子、其言如[#レ]此。彼謂[#三]忠孝不[#二]兩全[#一]者、世俗之見也。
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〔譯〕君に事《つか》へて忠ならざるは孝に非ざるなり、戰陳《せんじん》に勇《ゆう》無きは孝に非ざるなりと。曾子《そうし》は孝子なり、其の言|此《かく》の如し。彼の忠孝|兩全《りやうぜん》せずと謂ふは、世俗《せぞく》の見なり。
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〔評〕十年の難《なん》、賊の精鋭《せいえい》熊本城下に聚《あつま》る。而て援軍《えんぐん》未だ達せず。谷中將死を以て之を守り、少しも動かず。賊勢《ぞくせい》遂に屈し、其兵を東する能はず。昔者《むかし》加藤|嘉明《よしあき》言へるあり。曰ふ、將《しやう》を斬《き》り旗《はた》を搴《と》るは、氣盛なる者之を能くす、而かも眞勇《しんゆう》に非ざるなり。孤城《こじやう》を援《えん》なきに守り、孱《せん》主を衆|※[#「目+癸」、第4水準2−82−11]《そむ》くに保《たも》つ、律義者《りちぎもの》に非ざれば能はず、故に眞勇は必ず律義者《りちぎもの》に出づと。尾藤孝肇《びとうかう
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