てう》曰ふ、律義《りちぎ》とは蓋《けだ》し直《ちよく》にして信あるを謂ふと。余謂ふ、孤城を援《えん》なきに守るは、谷中將の如くば可なりと。嗚呼中將は忠且つ勇なり、而して孝其の中《うち》に在り。
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三七 不[#レ]可[#レ]誣者人情、不[#レ]可[#レ]欺者天理、人皆知[#レ]之。蓋知而未[#レ]知。
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〔譯〕誣《し》ふ可らざる者は人情なり、欺《あざむ》く可らざる者は天理なり、人皆之を知る。蓋《けだ》し知つて而して未だ知らず。
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〔評〕榎本武揚《えのもとぶやう》等五|稜郭《りようかく》の兵已に敗る。海律全書《かいりつぜんしよ》二卷を以て我が海軍に贈《おく》つて云ふ、是れ嘗て荷蘭《おらんだ》に學んで獲《え》たる所なり、身と倶に滅《ほろ》ぶることを惜しむと。武揚の誣ふ可らざるの情|天聽《てんちやう》に達《たつ》し、其の死を宥し寵用《ちようよう》せらる、天理なり。
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