のは年長者に讓《ゆづ》り、自分勝手《じぶんがつて》を構《かま》へず、互に誠を盡すべし。只|慾《よく》の一字より、親戚の親《したしみ》も離るゝものなれば、根據《こんきよ》する處を絶《た》つが專《せん》要なり。さすれば慈愛自然に離れぬなり。
書物の蠧《むし》と活學問《くわつがくもん》
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明治二年、翁は青年五人を選び、京都の陽明學者|春日潜庵《かすがせんあん》の門に遊學せしむ。五人とは伊瀬知《いせぢ》好成([#ここから割り注]後の陸軍中將[#ここで割り注終わり])、吉田清一([#ここから割り注]同上[#ここで割り注終わり])、西郷小兵衞([#ここから割り注]翁の弟[#ここで割り注終わり])、和田正苗、安藤直五郎なり。其時翁は吉田に告げて曰ふ。
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貴樣《きさま》等は書物の蠧《むし》に成つてはならぬぞ。春日《かすが》は至つて直《ちよく》な人で、從つて平生も嚴《げん》な人である。貴樣等修業に丁度《ちやうど》宜しい。
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と、又伊瀬知に告げて曰ふ。
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此からは、武術|許《ばか》りでは行けぬ、學問が
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