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(按)右は文久二年冬、沖永良部島牢居中、孟子の一節を講じて島人操坦勁に與へたるものにて、今尚ほ同家に藏す。
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一家親睦の箴《いましめ》
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翁、遠島中、常に村童を集め、讀書を教へ、或は問を設けて訓育する所あり。一日問をかけて曰ふ、「汝等一家|睦《むつ》まじく暮らす方法は如何にせば宜しと思ふか」と。群童|對《こた》へに苦しむ。其中尤も年|長《た》けたる者に操《みさを》坦勁と云ふものあり。年十六なりき。進んで答ふらく、「其の方法は五倫五常の道を守るに在ります」と。翁は頭を振《ふ》つて曰ふ、否々《いな/\》、そは金看板《きんかんばん》なり、表面《うはべ》の飾《かざ》りに過ぎずと。因つて、左の訓言を綴《つゞ》りて與へられたりと。
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此の説き樣は、只|當《あた》り前の看板のみにて、今日の用に益なく、怠惰《たいだ》に落ち易し。早速《さつそく》手を下すには、慾《よく》を離るゝ處第一なり。一つの美味あれば、一家擧げて共にし、衣服を製《つく》るにも、必ず善きも
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