、以上のように記録されてあったのだ。その二人がまア何と言う事だ、一人はHへ来る途中の高空で紛失して了うし、一人は前額部をひどく打ち砕かれて、鮮血にまみれて死んでいたのだ。
池内、三枝、両機員はその場からH市警察署に拘引されて取調べられた。事件に就ては全然知る所がないと言った池内に対して、署長はひどく怒った声で言った。
「では君達は飛行中一度も客室には顔を出さなかったと言うのか? 君達の席から全く離れはしなかったと言うのか?」
「不幸にして私は客室を覗く機会を持たなかったのです。私はかえってそれを遺憾に思っている位です」
池内操縦士は、同僚を庇《かば》うように昂然と言った。が、三枝はすっかり顔色を失って峻烈そのもののような署長の前に、
「いや、私だけは一度飛行中客室へ降りました」と告白せざるを得なかった。
「何の為めに――?」
訊問官は追撃した。
「便所に行ったのです」
三枝は顫えた。
「ふん」署長は冷笑した。「では君は、君が犯人でないと言う証拠を提出しない限り当面の容疑者たらざるを得ない。又池内君は、完全なるアリバイがない限り、又被疑者たるを※[#「二点しんにょう+官」、第3水
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