旅客機事件
大庭武年
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)驟雨《しゅうう》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一寸|眸《ひとみ》を
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「二点しんにょう+官」、第3水準1−92−56]
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1
――E・S微風、驟雨《しゅうう》模様の薄曇。
「乗客は幾人だね?」
煙草を銜え、飛行服のバンドを緊《し》め直し乍ら、池内《いけうち》操縦士が、折から発動機《エンジン》の点検を了《お》えて事務所に帰って来た、三枝《さえぐさ》機関士に訊ねた。
「二名だよ」
外では、ブルンブルンBr……と、湖水の水のように、ひんやり静まり清まった緻密な空気を劈《つんざ》いて、四百五十馬力のブリストルジュピタア発動機が、百雷のような唸りをたてている。――矢張り定期航空は、各エア・ポオトで欠航の無い事を誇りにしている為、大抵の天候なら出発するのだが、然し一日中に一ぺんは空を飛ばなくっちゃ夜ねむられないと言うエ
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