―旅客機に会ったのは午前十一時二十四分。その時に操縦室に操縦士と機関士が着席し、客室に二名の乗客が練習機の方を窓を開けて眺めていた」
報告を受取ると池内は我を忘れて万歳を心に叫んだ。勿論綿井の屍が発見せられたのは、P民間飛行場よりH飛行場に寄ったN原の上であるから、綿井がその頃まだ、機上にいたのは不思議ではないが、秀岡がちゃんと立派に生きていたとは一体何を意味するであろう。一体三枝が便所に行くと称して去ったのが、十一時十分ごろ。帰って来たのは正確に十一時二十分。そして、練習機と肩を並べたのが十一時二十四分。N原の上を通過したのが十一時三十二分頃であった。さすれば、秀岡の惨殺されたのは、三枝が操縦室に帰って後の事となり、三枝が二度と操縦室から出なかった以上、三枝は秀岡を殺した犯人ではなくなる筈ではないか!
「兎に角、三枝は僕の期待を裏切らなかった」――池内は雀躍《じゃくやく》した。だがそれを地上の人達に証明するにはどうしたらいいのか? 池内は考えざるを得なかった。
がその翌日。
池内は緊張の下に、隠し切れない喜びの顔色を泛《うか》べ乍ら、H警察署の召喚に応じた。今度は相手が検事だっ
前へ
次へ
全23ページ中16ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
大庭 武年 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング