ずにはいられなかった。そして遂に茲《ここ》に、犯人は残った二名のうちに限定されてきて了った。即ち、Aの場合か、Bの場合か――?
4
池内は、自分一人になってつぶさに事件を考える、時間と気持の上の余裕を得た。すると彼の胸には、如何にしてもこの事件の謎を自分の力で解決しなくてはならないと言う責任感が湧いて来た。運命的とは言え、自分こそ事件現場にいた唯一の無関係者だ、自分がこれを解決せずに誰れに解決が出来ると言えるであろう。それよりなにより、又自分にとっては、親愛なる三枝を冤罪から助け上げなくてはならぬ義務がある。自分は彼を絶対に信じる。生命を投げ出し合っているエア・メンたちにのみ流れている純真な道徳が、決してそのような犯罪を犯させないであろう事を信じる!――池内は精密に思考をめぐらしてみた。と、又急に思いついた事は、途中で出会ったP民間飛行場の練習機の事である。「そうだ、空中で尠くとも我々以外に我々の機の中の様子を知っている者は、あの機の乗組員だ!」
池内は警察にその旨を通知して、警察からP飛行場に、長距離電話で問い合せてもらった。返事は即ち恁《こ》うだった。
「―
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