り自殺を決心したものの、機上に於て同乗客の鞄中に大金のあるのを知り、三枝が秀岡を脅迫した事実あるを幸い、自身が兇行を演じて大金を奪い、自分は予定通り自殺を装って飛行機から飛び降りたが、落下傘に就ての知識が薄かったので、遂に惨死した(然しこの場合、不審な事は、その屍体が金を携帯していなかった事である)。
 B 三枝が加害者である場合
 三枝は綿井の自殺後秀岡を撲殺した。又は秀岡を撲殺後、綿井をも機上からつき落した。ただしこの場合も金の行方は不明。
 C 池内が加害者である場合
 厳密に言えば、Cの場合は考えられないかも知れない。何故となれば、池内と被害者とは全然|関聯点《かんれんてん》のない人達だから。尤も金が目的と言えば理由は出来るが、池内が若し犯罪に関係しているとすれば、彼は三枝の補助者であるか、共謀者であるかである。
 然し、警察が斯うして事件を探求しているうちに、求めに応じて各地からかかって来た長距離電話は、完全に池内操縦士のアリバイを確立させて了いつつあった。そして結局池内は、事件に就て、或いは精神的に関係者であったかも知れないにしても、直接な加害者ではない、と言う事を確認され
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