あなたは同乗のよしみで、私を守って下さい。お礼はしますから」
次に集った情報とはどんなものであったろう。即ち、
一、綿井茂一の屍体、N原の一隅に発見さる。飛行機より墜死したもの。附近に未開の儘の落下傘発見。屍体には所持品(自分の持物以外)全然無し。近傍の農夫発見して届け出《い》ず。
一、墜死者綿井茂一は、D飛行場出発前、飛行場員に託し、一封の手紙を投函せんとした。場員は受取った儘おいたが、事件報知と共に、警察官立会の上開封した。それはA市にある家庭に宛てたもので、商売上の失敗から厭世《えんせい》自殺をする旨の遺書で、その自殺の方法として、飛行機から飛び降りる事を択《えら》んだとしたためられてあった。これはD飛行場からの長距離電話。
一、被害者秀岡氏は、取調べの結果、商業上の要務で、現金五万円余を携帯し、至急K市に向う途中であった。(同上電話)
3
訊問官は、今は三枝機関士を、正当な兇行者と疑わざるを得ない事になった。
「君は、秀岡氏を殺すと脅迫したろう?」
三枝は、それがどうして分ったろう、と言うように顔色を変えた。
「…………」
「君と秀岡氏とは如何な
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