ていません。もう一、二回、可楽の会へ参じてのちの宿題としましょう。「道灌」や「長屋の花見」のような笑いの多い噺の時、ことに感じさせられる(つまり気になる)点なのです。
「居残り」は私には狂馬楽・盲小せん・先代正蔵の時代を懐かしむ意味で何ともいえないものばかりでなく、この人のは先年もなかなか「品川」が描けていてよかった。今回はまたあの時といろいろちがう演出もありましたし、ことに佐平次が「俺は変わったことをして死んでしまいたいんだ」というような変質的な性格であることはたいへん結構と思いました。変質でいておかしい。つまり今の小半治に肚ができたようなへんな奴だったのだと思います、佐平次って奴は。お客をとりまくくだりの泉岳寺の土産の猪口のくすぐりよく、若い衆がいつも言いかぶされてしまうあたりまたじつに愉しく、これはこの噺そのものも傑されているし、可楽もいい演出をしてくれたのだと思いました。この前は翌朝、戸をあけてフーッと深呼吸をし、磯臭いものを感じさせたが、今度はお台場のことを言って雰囲気を出した。どちらもいい。この次には深呼吸をしてからお台場云々へかかってくれたらいよいよいいと思います。決して
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