話、永井先生の「矢筈草」の発端、フリツルンプや凡骨や都川という木下杢太郎氏の詩へ出てくる鳥屋の話など、ことに心を惹かれました。もう読んでいてもクラクラすることもなく、おかげで夕方まで退屈しないで過ごすことができました(ばかりか、たいへん愉しかった)。そうして、ひと風呂浴びて富士市の雑踏の中を、高のところへ訪ねていったという段取りになるのです。

 ……以上をおしまい近く書き続けていた時、文楽を味わう会の幹事さんたちが三人、お酒持参で見えました。すぐお酒がはじまって文楽君の話やその他の落語家たちの話で他愛なく半日を過ごしました。夜は夜で、大陸へ発つ松平晃君が訪ねて来てくれたりしました。どうやら私の頭もだんだん治っていきそうです。でも、このさい、わざとうんと休むことにして、せいぜい他日を期したいと思っています。いっぺん高とおあそびに。
 もう私どもの町々も、新内流しやアコーディオンの流しが毎晩、めっきりと増えて来ました。これが来はじめると、ハッキリ「夏」が感じられるのです。では。
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    馬楽供養

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菜種河豚のころに延ばして弥太郎忌  容
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