に傍点](場違い)よと、一部のお仲間うちにはとかくさんざんにさげすまれたり。
遮莫《さわれ》、その小亀一座にはがんもどき[#「がんもどき」に傍点]と仇名打たれし老爺あり、顔一面の大あばた、上州訛りの吃々《きつきつ》と不器用すぎておかしかりしが、ひととせ、このがんもどき[#「がんもどき」に傍点]、小亀社中と晩春早夏の花川戸東橋亭の昼席――一人高座の百面相に、その頃巷間の噂となりし小名木川の首無し事件を演じたりけり。まず犯人を逮捕せんと捕縄片手にいきまく刑事、お釜帽子も由々しき犯人、捕縛現場の赤前垂もなまめかしき料亭仲居と次々に扮したるいや果てが、水上たゆた[#「たゆた」に傍点]と泛《うか》びたる女の生首。何しろ、じゃんこ[#「じゃんこ」に傍点]面の見るもいぶせき男だけに、この生首、物凄しとも物凄し、いやはやぞっとおののきし記憶あり。百面相も数々あれど、かかるぐろてすく[#「ぐろてすく」に傍点]なるはまたとあるまじ。まずは他日の思い出までに一筆ここに誌すとなん。
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寄席の都々逸
この頃は寄席にもいい音曲師がいなくなって、従って、いい都々逸も聴かれません。
震
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