破した軽気球か? と私はいつも疑いさえする。――まったくあれがしんしょう[#「しんしょう」に傍点]である――。「ずっこけ」で彼が諷うよしこの[#「よしこの」に傍点]には、
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※[#歌記号、1−3−28]火事があるから出てみてごらん
 遠けりゃ戸をしめて――
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 ここで一調子、奇妙にあがって、
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お寝よ、ふわっ、ふわっ!
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 と言うのすらある。最もむらくに風格的な歌だといってよかろう。
 しかし、どこから、何から、いったいはじめにああいう「ふ、ふあ、ふあ、ふあーーっ」といったようなことを言い始める了見になったのだろう? この私がいっぺんむらくにとっくりと膝を抱いて聞いてみたいところのものである――(作者註――このむらくのち発狂して死す)。

     君見ずや「かっきょの釜掘り」

 ※[#歌記号、1−3−28]圓遊すててこ、談志の釜掘り、遊三《ゆうざ》のよかちょろ、市馬《いちば》の牡丹餅――今もこういう寄席の竹枝《こうた》が、時おり、児童《こども》の唇《くち》にのぼる。※[#歌記号、1−3−28
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