で聞こえてやがて凍ったような下駄の音ばかりが次第に遠のいていった。
「……」
 身ずまいを正して小圓太はいよいよ上がることにした。上がる前に楽屋格子の透き間からソッと客席のほうをうかがってみた。下席とはいえ、新春《はる》のことでギッチリといっぱいに詰めかけている。
 こんないっぱいのお客の前で喋るなんて子供の時分のとき以来だ。何だか胸がワクワクしてきた。ゴクッと生唾を飲み下した。それから誰にともなく両手を合わせた。やがて思い切って板戸へ手を掛け、スーッと引いた、はずがガタガタガタンと至って不器用に大きな音を立ててしまった。新米の泥棒が物にけつまずいたときのよう、たちまちハッと小圓太はまごついてしきりに動悸を早くさせながら世にもオズオズしたかっこうで、宵にいっぺん上がった高座へ、ソーッとまた上がっていきかけた。
「……」
 そのとたんだった、何だか分らない破れッ返るような大きな声を背後に聞いた、と思う間にムズと誰かに襟っ首を掴まえられてズルズルズルと楽屋まで引き摺り下ろされてきた、絶えずその間も口汚く罵《ののし》られながら。
「……」
 やっとその手を放されたとき、ボンヤリ顔を見上げると
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