小説 圓朝
正岡容

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)行燈《あんど》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)八十八|阪《さか》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#歌記号、1−3−28]
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 夕月淡く柳がくれの招き行燈《あんど》に飛ぶ禽《とり》落とす三遊亭圓朝が一枚看板、八丁荒しの大御所とて、焉《いずく》んぞ沙弥《しゃみ》より長老たり得べけむや。あわれ年少未熟の日の、八十八|阪《さか》九十九折《つづらおれ》、木の根|岩角《いわかど》躓き倒れ、傷つきてはまた起《た》ち上がり、起《た》ち上がりてはまた傷つき、倦《う》まず弛《たゆ》まず泣血辛酸《きゅうけつしんさん》、かくして玉の緒も絶え絶えに、出世の大本城へは辿り着きしものなるべし。即ち作者は圓朝若き日のそが悶々の姿をば、些《いささ》か写し出さむと試みたりけり。拙筆、果たしてよくその大任を為し了《おわ》せたるや否や。看官《みるひと》、深く咎め給わざらむこ
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