んで[#「てんで」に傍点]正体のない杉大門をかかえ込むようにして駕籠へ乗せ、そのあとお膳の片づけをして、やっと表の戸締まりをしにきた。
師走の空がよく晴れて、青い星がいっぱいチカチカまたたいていた。しきりにすさまじく凩《こがらし》が軒端を吹き抜け、通りのほうで犬が二、三匹遠吠えしていた。師匠の鼾がここまで絶え絶えに聞こえてきていた。
顔中を粒々に鳥肌立たせた小圓太は、土より冷たく凍てかえってしまった手で、やがて表の戸を閉めようとした。ちぢかんで、どうしてもおもうように閉まらなかった。
五
お正月の下席から思いがけなく小圓太は、文楽師匠から赤坂一つ木の宮志多亭へ借りられた。もちろん、前座としてであるが、それでも何でも嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。骨身を惜しまず立ち働いた。
ただ毎晩、高座でやる噺に自信がなくてたいへん困った。というのはあれから暮れの三十日の日、たったいっぺんだけ師匠は「蛙の牡丹餅」の稽古をしてくれた。が、小僧がお重の中の牡丹餅を食べてしまって、代りに入れておいた蛙の飛びだす眼目のところがどうしても巧くできなかった。活きていない、その蛙は――そうい
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