神さんにもすすめていっしょに読ませているらしく、昼の食事を運んでいくと机の上にひろげられた一冊の本へ夫婦が鴛鴦《えんおう》のように肩を並べて睦じく目を落としていた。小圓太のほうなんか振り向いてもくれなかった。
 灯がつくとまた師匠はお座敷にでかけていった。また遅くかえってきた。また飲んでまた寝てしまった。
 その次の日は文楽師匠、馬生師匠、りう馬師匠、他いろいろの人が朝早くからやってきた。そうして運座がはじまった。題は「雪」「餅搗」「落葉」だった。りう馬師匠が「からからと日本堤の落葉かな」という句をだして、そりゃお前抱一上人さまの名高え句じゃねえかと文楽さんからたしなめられ、一同大笑いになったりした。運座はいい加減にして間もなくお酒がはじまり、歌えよ踊れよの年忘れ、到底稽古どころではなかった。
 次の日は誰もこなかった。「梅暦」ももうおしまいになったとみえてお神さんはおしのどんを指図して台所で春の仕度に余念がなかった。師匠一人が退屈していた。しきりに家の中を行ったりきたりしていた。でもなぜか稽古はしてくれなかった。
 その次の日もまた、そうだった。いよいよ師匠は身体を持て扱っているらし
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