かがやいている柚の木の下、竹箒握りしめて果てしなき物思いに沈んでいた自分だった。少し汚れたおしきせ[#「おしきせ」に傍点]の黒紋付の肩先へ、ふたひら三ひら何かの落葉がふりかかっていた。あわてて振り落とすと小圓太は、またしても辺りを見廻した。向こうの大きな白山茶花の枝々を揺がせて、葡萄いろをした懸巣《かけす》が一羽おどろいたように飛び立っていった。
「……」
 フーッと息を吸い込み、フーッと吐きだした。もういっぺん深く吸ってもういっぺんまた深く吐きだした。何だか身も心も、あらゆる汚れがいっぺんに去ったように爽々としてきた。そういっても一木一草ひとつひとつがあらためて美しい真新《まっさら》な了見方でみつめられるような、しみじみと生れ変った心持だった。
「……」
 黙って手にしていた竹箒を両手で横に高く差し上げ、恭々しく小圓太はお辞儀をした。


     四

 もう落語を喋りたいとも考えなくなった。稽古をして貰いたいとも格別におもわなくなった。ただ何事もおもわずに、この世は夢のまた夢と無念無想に小圓太は、その日その日をまめまめと働きだした。慾も徳もなく、身を粉に砕いて働いていた。庭の落葉
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