みませんでした。
さらに低く口のうちで呟いた、声ならぬ声へ心で最敬礼をしながら。「三社祭」の善玉《ぜんだま》のような自分と同じ木綿の黒紋付を着た自分の「心」というやつが、しきりに頭へ手をやって閉口している姿がハッキリと目の前に見えるようだった。
ウム、それならば――。
はじめて相手は破顔一笑したらしく、
やれ、元気をだしてやれ。
お前は何もおもうことはない、不平も不満も希望すらも要らない、まだいまのうちは。
ただただここの家に置かせていて貰うってことだけでいいとしろ。
前途も糞もあるものか、ただ現在――現在だけをありがたいと三拝九拝していろよ、そこからきっと「路」が拓ける。
でも、でも、そんな「路」が拓けるなんてことはずっと、ずうっと、あと[#「あと」に傍点]のことだ。
くどいようだが、いまのこうやっていられることただそれだけを、ありがたいものにおもえ。そうおもう修業をしろ。
二度とこんな了見違い起すと、ほんとに取り返しのつかないことになるぞ。
いいな、分ったな。
「……わ、分りました」
思わず大きな声立てて叫んだ。我れと我が声で、ハッと小圓太は気が付いた。冬日
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