えばお情ない)。
「……」
 考えるとだんだん情なさに、小圓太は自ずと自分の声が湿《うる》んでくるような気がした。つい二ヶ月前、空気をひと呼吸《いき》吸っただけで生甲斐を感じた寄席の楽屋が、何だかこのごろでは蛇の生殺しにされているかのごとき自分の姿を姿見に映して見ているところのようで毎晩々々師匠のお供をしてでかけていくことが譬えようもない苦患《くげん》のものとなってきた。
 真打はおろか、前座になる日がいつくるのだろう、俺。
 前座という脂《やに》っこい門のひらく日すらが、あの山越えて谷越えてのはるかのはるかの遠い末の日のことのよう心細くおもわれて何ともそれではつまらなかった、味気なかった、もひとつハッキリいわせて貰うならば、生き抜いていく甲斐がなかった、もう自分に。

 煤掃きを明日に控えた十二月十二日の七つ下り、ところどころたゆた[#「たゆた」に傍点]に柚子の実の熟れている裏庭の落葉を大きな竹箒で掃き寄せながら小圓太は、見るともなしに竹箒を握っている自分の右の掌を見た。
「……」
 思わず目を疑ったほど、黄色い日の中に照らしだされたその手は紫ばんでコンモリ醜く腫れ上がり、ひどい霜焼
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