は途中でそばやへ入る、でなければやた[#「やた」に傍点]一のおでんやへ飛び込む、そうして熱燗でいっぱいやりながらそばやなら鴨南蛮か天ぬき、おでんやなら竹輪かがんも[#「がんも」に傍点]へ辛子をコテコテと付けてさも美味しそうにそいつをたべる。
 永いことかかって充分に味わった上やっとたべ終ると、
「サ行こう」
 表へでて寒い闇の中で、
「たべたいかえ」
 こういって訊く。
 たべたいやね、そりゃ俺だって。聞くだけ野暮だろう。
 で正直に、
「ヘイ」
 ついこういうと、
「……たべてえとおもったら……」
 顎で二度三度肯いておいて、
「早くお前、真打になんなよ」
 だって――。
 冗、冗談じゃない。
 これが常日ごろ噺の稽古をしていてくれて、その上私が拙いんなら、こんな皮肉な真似をされてもいい。
 あきらめもするし、なるほど師匠のいう通りだとおもっていよいよ勉強もするだろう。
 それが噺の勉強をしようためのあらゆる大手|搦手《からめて》の城門はピタリと自分が閉めてしまっておいて、辛い目にだけいろいろあわして、早くお前早く真打になんなったって、そんな、そんな無理なこといわれたって(あまりとい
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