圓生、圓橘、圓馬、しん生、龍生、馬生、文楽、馬石、馬六、馬黒、馬道、馬龍、馬猿、馬丈、馬之助、馬風、馬勇、玉輔、龍若、りう馬、龍齋……見れども見飽かぬ落語家たちの名前づくし。小圓太にとってそれは、あとからあとからまだあるあると口の中へ放り込まれる美味しいお菓子にもさも似ていた。こうしてこうやって次々とこの名前を見ていることだけでも、この部屋にいることは嬉しかった、ありがたかった、この世ながらの極楽――花園に住む心地がした。
 いっぱいの幸福感に包まれて、小圓太は夢も見ずにグッスリと眠った。


     二

 ……咽喉元過ぐれば熱さを忘るるとは、さもいずこの誰がいいだした言葉だろう。
 我が小圓太、圓生門にあること二ヶ月、もうその年の暮のうちには、この諺に当て嵌るような心根になってきていたといったら、人、恐らくはその怠惰薄弱心に呆れるだろう。
 あるいは色を作《な》して憤るかもしれない。
 が――しばらく待っていただきたい、あれほど焦れに焦れて止まなかった落語家という世界に飽きだして小圓太、日夜を儚《はかな》みだしたのではつゆ更ないのだから。
 むしろ落語《はなし》に、芸に、ひとし
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