「だからさ、ねえ、だから話はおしまいまで聞いて貰わなけりゃ。いいえ、くどくもいうとおりこの子は決してうち[#「うち」に傍点]のお宝を泥棒をしたんでも何でもない、ただ寄るとたかるとお店のお銭を、お給金《わり》かい、つまりそのお給金《わり》の形にこしらえちまっちゃ喜んでるんだ。金箱を開けてみるとあるったけのお銭がみんな紙に包んでお給金《わり》になってる。それじゃお前さん、お客様がお見えになってイザ御両替っていうとき、いちいち紙を破いたり何かと手がかかってしまって仕方がない。何べん叱っても叱ってもまたやってしまうんだ。だからそんなお前さん、手のかかる子供を私のところじゃ、とてもお預りしてはとこう……」
「……」
話の途中からだんだん柔和な顔付きを取り戻していっていた圓太郎が、やがてはそもそも嬉し可笑しそうにゲラゲラゲラゲラ笑いだすと、
「エ、そ、そいじゃ……こ、こいつがお店のお銭をしょっちゅうお給金《わり》にこしらえちゃ、ただ楽しんでいるってこういうわけなんで。じゃ、つまり盗《と》るんでもない、ただこうこしれえちゃ楽しんでるだけ……こいつァ、こいつァ……」
大きなお腹を両手で押さえるよ
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