だった、大きく戦《おのの》きながらうずくまっているほうへ目をやった。
「分りましたじゃすぐお床を」
やっと瞼へ押しあてていた指を離して、
「きよや、じゃお前もすぐお前のお蒲団を持ってきてここへお敷き」
こう命じた。
やっといくらか元気づいてきよが次の間へ立ち、小糸が戸棚を開けて真紅な夜具をだしはじめたとき圓朝は、台所からもうひとつ小さな手燭へ灯を点して持ってきた。
「万一のときのことを考えて私は二階に置いてある書きものの始末をつけてくるから」
こういって、
「すぐ下りてくるけれど、構わないから先へお前たちは寝ておしまい」
手燭片手に、そのままミシミシ音させて梯子段を上がっていった。また小銃が、乱れ打ちに聞こえてきた、「ヒ、人殺し」。そのあとヒイーと尾を曳いた異様に甲高い若い女の叫びといっしょに。車軸の雨の中走りゆく六、七人の足音が、にわかに乱れた。
二階の最前の部屋へ入ってペタンと坐り、傍らへ手燭を置いたとたん、裾風でだろうか、音もなく灯は消えてしまった。
鼻をつままれても分らない真の闇。雨で湿《しっ》けた、生乾《なまがわ》きに似た壁の匂いがムッと鼻を衝いて、また小銃が
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