、公方さまのほうがどうだともいってますし、そこの魚屋さんの前では大ぜいの人がてんでにいろいろのことをいっていてちっとも分らない」
語り継いで小糸は、
「でも大へんな騒ぎ、聞いていて私ブルブル身体が慄えてきたわ」
意味あり気に圓朝のほうを見ると、
「だってもう焼けてしまったっていうんですもの」
世にも寂しい顔をした。
「ド、どこがよ、どこが焼け……」
キッと相手を見守った。
「……猿若三座が」
いよいよ寂しい顔をして、
「吉原も、魚河岸も、このお江戸の豪儀なところはみんな坊主が憎けりゃ袈裟までだって、片っ端から薩摩のお侍が、焼き、焼き棄ててしまいましたとさ」
さも口惜しそうに目を湿《うる》ませた。さすがに生え抜きの江戸育ちの、憤ろしさに抜けるほど白い襟脚《えりあし》が止む景色なく慄えていた。折柄またパチパチパパパパパと続けざまに小銃の音が弾《はじ》けてきた。そして、消えた。
「……」
黙って圓朝は唇を噛んだ。いつ迄もいつ迄もそうしたまんまでいた。胸かきむしられるような憤ろしさに、自分もまたどうにもこうにもやり切れない思い。希《ねが》うことならいま籠釣瓶の鞘払って、床柱といわ
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