きた。母のおすみも元気だった。少し遅い出番の弟子たちはまだ家にいて無事だったけれど、早くでていったほうの弟子連中は途中でどうなったか。どこかしことなく江戸中残らずの木戸が、もう閉《し》まってしまっているのだということだった。
「それに戦《いくさ》はお師匠《しょ》さん四谷へおいでの時分から上野辺じゃ、もうそろ始まっていたんですってねえ」
薄黄色い灯の中でひとしお顔を青白くしながら、やっと手足を拭いて坐った小糸が、いった。
……そういえば思い当る、九段からあのお壕端かけてかえりはことに錦布《きんき》れの薩摩侍が大ぜい殺気立っていたっけ、このごろ毎度のことだから気にも留めていなかったし、それにこっちは師匠のことで一杯だったから、久保本へ寄っても世間話ひとつするでなくかえってきてしまったのだったが、それではもうそんな差し迫ったことになってしまっていたのか。広小路の盛り場の今夜点していないわけが、いまにしてようやく肯かれた。同時に四谷の師匠のところへだしてやった弟子たちの、首尾好く先方へ着けたかどうかをおもってみた、寄席へでかけていった弟子たちの安危とともに。
「官軍が勝ったともいってますし
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