の戸を閉めた。すっかり閉め切ってしまったとき、サーッと篠《しの》を乱したような大降りになってきた。
 ダン、ダ、ダーン。なるほど殷々《いんいん》たる砲声が、遠くのほうから轟きだしてきた。
 いよいよ何かはじまった――。
 戸棚から真鍮の燭台を持ちださせ、それを下の座敷のまん中へ置いて圓朝は、たった一本だけのこっていた青蝋燭へ灯を点した。普通の蝋燭の灯のいろとちがって少し陰気で薄黄色いのが、いっそうこの場合の部屋のたたずまいを無気味にした。四方八方閉め切っているのにしきりにどこからか生暖かい風が忍び入ってきて、その灯を揺り動かした、まるでいまにも消してしまいそうに。無気味さが、ますます部屋一杯にひろがってきた。
 その灯の傍に坐って圓朝は、ジッと目を閉じ、腕組んでいた。少し離れたところに、ペタッと腰を落として女中も遠くから不安そうに主人の顔を見上げていた。
「開けて……あの開けて……私」
 ピューッとまた横なぐりの雨が表の戸へ吹きつけてきたとき、小刻みに駈けてきた足音が急に止まって、声がした。小糸だった。すぐ女中が立っていった。
 びっしょり[#「びっしょり」に傍点]濡れしょぼけて入って
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