た底まで圓朝は、微笑ましいものを感じないわけにはゆかなかった。
あとは倦《たゆ》まぬ勉強だけだ。
もっともっと道具噺に、千変万化の工夫を凝らそう、道具や仕掛にいくらかかっても構わないから。いよいよお客様をアッといわせよう。
固く心にこう誓った。
そのころ、圓朝贔屓のおんなたちもめっきり周囲に増えてきていた。手紙をよこすもあり、楽屋へ訪ねてくるもあり、中には代地の家まで押し掛けてくるものもあった。
中で圓朝の心に通うおんながただ一人だけあった。両国垢離場の昼席からは橋ひとつ隔てた柳橋の小糸という妓《おんな》だった。垢離場四年間(それほど連続的にその第一流の寄席は圓朝一人を出演せしめたのだった)の長期出演が、いつしか二人の仲に花咲かせ、実を結ばせるゆくたては[#「ゆくたては」に傍点]となったのだった。
小糸。
クッキリした濃い目鼻立ちのくせに陰影《かげ》が深く、顔も姿も寂しさひといろに塗り潰されていた。いつも伏目の、控え勝ちの、ジッと寄辺なく物思いに沈んでいるような風情――一にも二にも圓朝はそこに心を魅かれた。
むらがる仇花の中へほのぼのと姿を見せている夕顔の花ひとつ。
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