聞こえよがしに師匠圓生はまた、ほうぼうでから悪口をいって歩いた。当然、それは圓朝の耳へもつたわってきた。
 でも。
 小大橋《こたいきょう》で文楽師匠にいわれていたことがあった。決してもう昔のように悲しいとも怨めしいとも、また腹立たしいともおもいはしなかった。
 いつか――いつか分ってくれる。
 それでいいんだ。
 ひたすらそう考えて、自分のおもうところへのみ、馬上まっしぐら[#「まっしぐら」に傍点]にと進んでいった。同時にこうしためげない振舞のできてきた自分にしてくれた文楽師匠の情のほどを、いよいよかたじけないものにおもった。
「いい、圓朝は」
「ほんとに、まず圓朝だね」
 そこでもここでも圓朝の名が、旋風的な圧倒的な人気の中心となって渦巻いてきた。ようやく収入《みいり》がよくなってきた。小遣いも豊富に遣えれば、それでもなおかつ翌月へのこるまとまったものがあるようになってきた。
 余裕《ゆとり》――身にも心にも、生れてはじめてといっていい余裕というものが、ようやく春の日を芽吹く枝々のように生じてきた。いう目が、そこにでてきたのだった。
 すると――。
 まずやってみたい。
 そ
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