り》で」
 まだ心配そうに阿母は眉を寄せた。
「細工は流々《りゅうりゅう》仕上げをごろうじろ、とんだ『大工調べ』だが、大丈夫ですよ、これでもし一、浅草の寄席からお銭《あし》のとどくのが遅れてもいまいって演《や》る一席ですぐお宝が頂けますから」
 安心しておいでなさいとばかりピューッと圓朝は飛びだしていった、大晦日の夕日|舂《うすづ》く茅町の通りのほうへ。

「ヘイ圓朝、年忘れのお見舞いにうかがいました。誰方《どなた》も佳い年をお取り下さいやし」
 その羽子板ギューッと豆絞りの手拭で額のまん中へ結びつけて、さながら出入りの大工左官がお見舞いにきたようなかっこうをして圓朝は、汚い印袢纏のまんま颯爽と萬八の大広間へと飛び込んでいった。
「……」
 はや紅白梅活けた大花瓶まん中に、お供《そな》え祝った床の間ちかく、芸者幇間を侍らしてドデンとおさまっていた三十八、九のでっぷり立派やかな金太郎武蔵の主人はじめ、通人らしいその朋輩たちは、いずれも奇抜なこの圓朝のいでたちにアッと目を奪われてしまった。しばらくマジマジみつめていた。やがて感嘆の声が洩れてきた、誰彼からとなく。
「感心、いい趣向だな」
 
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