となってはしまっていたのだった。
 もっとも今夜おそくには、この間浅草の雷鳴亭からたのまれていった座敷のお銭《あし》がなにがしかとどけられることになっていたから、それでけさ餅代に質入れしたばかりの高座着さえだしてくれば、あとは書き入れの初席《はつせき》がいやでもふんだんに小遣いを稼がせてくれる。印袢纏一枚でも圓朝、ノホホンとさのみ苦労はしていなかったわけだった。萬朝はじめ弟子たちが湯へいってしまったあと、八つ下りの夕日の傾きそめたすみだ川の景色を父圓太郎の死後こっちへいっしょになっている阿母《おふくろ》と二人、炬燵に入りながらのんきに眺めていた。
「師匠いますか」
 侠気《いなせ》な若い仕の声がした。阿母がでていってみると、万八の若い仕だった。金太郎武蔵の旦那が御朋輩と年忘れにきておいでなさる、すぐ飛んできて貰いたいというのだった。
 永年のひいき先――着物《よろい》があるもないもなかった。
「ヘイ只今すぐ伺います、どうかよろしく」
 オドオドしている阿母の様子をおもって、ワザと元気に障子のこっちから声だけ掛けた。では何分お早く――とすぐ若い仕はかえっていった。
「いやだお前どうするお
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