おしめえにもうひと言だけいって聞かせておいてやる。お前、このごろ我流で新しい噺をこさえて大そうな評判だな。結構なこッた。豪儀なこッた。だがな、圓朝」
近々と憎さげに大きな鼻を寄せてきて、
「俺、俺の教えた通りの噺を演らねえような奴ぁ大嫌いなんだ。しかも手前《てめえ》は俺が甲州へ発った留守中、端席の真打なんぞ勤めて失敗《しくじ》りやがった。何かてえと俺の鼻明かそう明かそうとかかってる奴だから仕方がねえが、オイ昔から親に似ねえ罰当りァ、鬼っ子てんだぜ。人、面白くもねえ二度と圓生の弟子だなんてそこらへいっていいふらして貰うめえぜ、サ、これだけいったらもう用はねえ、帰れ帰れ」
グイとまた睨み付けたが、
「汝《うぬ》。さっさと帰らねえと……」
いきなり硯箱へ手をかけた。そこへ熱いお銚子を持った圓太がいそいそかえってきたがチラリ見て止めようともしなかった。
「あいすみませんお目障りで。ヘイ、すぐかえります、ヘイ、おやすみ下さい」
挨拶もそこそこに圓朝は楽屋を飛びだした。
ドーッとすぐあとで楽屋から笑い声がぶつけられてきた、面当《つらあて》がましく。
「ま、ま、ま、お待ち萬朝」
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