胸を撫でさすって圓朝は再び下向いてしまった。
「まあまあ、まあいい」
 あざ笑うように師匠はいって、
「蔭じゃ公方様の悪口だっていうんだ。しかしこの後もあることだ。あまり俺の前と後と、手の裏返したようなことだけはいってくれるなよ。おい圓朝おい、分ったか」
 一段と声を険しく高くしてきて、
「おい、分ったかったら」
「わ、分りました、あいすみません」
 低い低い声でいった。そうしてさらに頭を下げた。下げたその頭が慄えていた、あまりのことの口惜しさに。
「分ったら書け、今夜の詫状を。ええ、俺宛てにじゃねえ圓太宛てに、だ。それ圓太、そこの硯箱《あたりばこ》と紙と持ってきてやれ」
 さも快そうに師匠はいった。
 有無なくその場で圓朝は、先方のいう通りの文句で詫状を認めさせられた。どれほどそれを書く手のまた、憤《おそ》ろしく慄えて止まなかったことだろう。
「サ、書いたらそれでいい。お前の生《なま》っ白《ちろ》い面《つら》なんか見ていたくもねえんだ。帰れ帰れ早く」
 次のお銚子をニッコリ圓太に命じながら、その笑顔をすぐまた百眼《ひゃくまなこ》のよう、不機嫌千万なものに圓朝のほうへ戻して、
「オイ、
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