の名前の大きく書いてあるにおいておや。
 誰だろう。
 ハテ誰だろう。
 ほんとに誰がなったんだろう、一体。
 どう思い廻してみても側近に心当りのものがなかった。襲《つ》ぐには今更偉過ぎる人か、偉くなさ過ぎる人たちばかり。
 かいくれ[#「かいくれ」に傍点]圓朝には目星がつかなかった。
 それにしても自分のところへ披露のしらせひとつこないとは――。
 それだけにいよいよ当りが付かなかった。
 珍しくこの下席は浅いところで早くからだが空いてしまうので、休みで家の手伝いをしている萬朝を連れてある晩、フラリと圓朝は寿亭へとでかけていった。夜風は肌に染みるが、もうめっきり空のいろが春めきを見せて、新堀かけての寺町ではどこからともなく早い沈丁花が匂ってきていた。腰屋橋渡って向こうの暗いゴミゴミした町角に、その寄席はあった。

[#ここから2字下げ]
スケ
「三遊亭圓生
 三遊亭圓太」
[#ここで字下げ終わり]

 の看板が、紫ばんだ夜気の中にオットリと微笑んでいた。
 深く頭巾で顔を隠して圓朝たちは、中へ入った。八分がらみの入りだった。顔馴染の誰彼が、あとからあとからなつかしく高座へ上がってきた
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