。つづいて、さらになつかしい師匠圓生が上がってきた。顔見られぬよう柱のかげへ身をよじらせて圓朝はそっとうれしく聴き入っていた。あと[#「あと」に傍点]へでる初看板圓太の提灯をしきりに持って、未熟ではあるがどうか引き立ててくれと師匠はくどくど[#「くどくど」に傍点]頼んだのち、ついてはあれが道具噺をいたしますから手前のところはあとと色の変りをますようお笑いの多いところをと、「にゅう」という与太郎のでる噺を相変らず地味な話し口ではあるが、克明に演って引き下がっていった、さすがに、相応以上に受けていた。
……久保本の自分の真打《しばや》のとき、毎晩同じ噺を演っては困らせたことをおもいだして圓朝は、ふっと身内《みうち》が寂しくなった。
師匠が下り、中入りが過ぎると、にわかに浮き立つようなシャギリの囃子が聞こえてきた。この囃子を聞きながらまた圓朝は師匠に今夜の演題《だしもの》を前で演られてしまったため、何を喋ろうかどう喋ろうかととつおいつ[#「とつおいつ」に傍点]したときのことを、きのうのごとくおもいだして、いよいよしんしんと寂しくなってきていた。
そのとき御簾《みす》が上がり、浪に兎の背
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