興行がおわるとすぐあくる朝、また手土産を携えて圓朝は、師匠のところへ礼にいった。
「圓朝さん。いまうちの人、風邪気味で臥《ふせ》っていますからお目にかかれないそうです」
 少し老けたが相変らずつんと美しいお神さんがでてきて、術もなくいった。ピシャンと障子を閉めてそれっきり、また奥へ入っていってしまった。
 そのくせ奥では高らかな師匠の笑い声が聞こえていた。もう一人相槌打って笑い合っている声のたしかに聞き覚えありとはおもいながらも、どこの誰やら分らなかった。
 ……一瞬、消えてしまっていたはずの心の澱というやつが、またそろそろ頭をもたげだしてくることをどうすることもできなかった。

 その後何べんいっても師匠は会ってくれなかった。いつもお神さんがでてきては取り付く島もないくらい、留守だとか病気だとか呆気なく玄関で断られてしまった。しかもそのたんび、師匠の自宅にいることはハッキリと分った、あるときはまた気配で、あるときは誰か分らないけれど確かに聞き覚えのある声といっしょに師匠の声が大きく聞こえて。
「止そう、しばらく師匠を訪ねるのは……」
 こんなことを繰り返したのち、圓朝はこう決心してし
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