の楽屋だった。ニコニコ愛敬たっぷりに上がっていった師匠の圓生が、なんと今夜最終に圓朝自身鳴物や道具を遣って演るはずの「小烏丸」をそっくりそのまま丸ごかしに素噺《すばなし》として喋ってしまったからだった。
 地味な話し口とはいえ、素噺とはいえ、老練の圓生。きのうきょう出来星の圓朝の腕前なんか、爪の先へも及ぶべくなかった。
 ハッと吐胸を突かれたときはもう遅く、あれよあれよといううちにとんとんと噺は運ばれ、やがてアッサリ落《さげ》まで付けられてしまった。
 もちろん、ひと方ならない受けようだった。
「ハイお先へ。しっかりおやりよ」
 下りてくるとニコリと笑ってそのまま師匠は、すましてかえっていってしまった。
「ああ、どうも、これはとんだことになってしまった」
 いても立ってもいられなくて、頭をかかえて圓朝は考え込んでしまった。急に道具を取りにやるといっても、青山から代地まで。しょせんが今夜の役には立たなかった。
 とするといま持ってきている道具で演るより仕方がない。しかしそのいま持ってきている道具は、あくまで最前師匠が演ってしまった「小烏丸」以外には通用しないものだった。
 さりとてまさか
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