た。
「…………」
圓朝の喜びは文字通り筆紙に尽せなかった。はるばる山手《のて》からその交渉にきてくれた瘠せた下足番の爺さんへ、心の中で手を合わせたくらいだった。よちよちかえっていく爺さんのこけた背中の辺りからは、キラキラ後光が映《さ》しているようにすらおもわれた。
青山南町なら、例の赤坂の宮志多亭へほんのひとまたぎであることも妙にうれしかった。
雷隠居だってきっとこの私の看板を見るにちがいない。
ただひとつ問題は寄席のほうから、スケを師匠の二代目圓生にぜひねがいたいと註文されたことだった。
「…………」
ハタと圓朝は困ってしまった。
まさか現在の師匠を只今不首尾になっておりますとはいえなかった。
第一先方としても、まだ脂《やに》っこいこの自分に真打《とり》をとらせてくれる以上は、せめて師匠くらいのところを助《す》けさせなければ看板|面《づら》花やかに客が呼べないものとおもっているくらいのことは、圓朝といえどもよウく分り過ぎるほど分っていた。
だけにいっそう辛かった。
よろしゅうございます。真打の取りたい一心でこう容易《たやす》く引き受けてはしまったものの、このごろ何
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